· 

前立腺肥大症について 2

 

 

今回は、前立腺肥大症の治療について述べます。 

 

前立腺肥大症は良性疾患ですので、患者さんの困っている度合いにより治療が多少異なります。

 

 例えば前立腺が鶏卵以上の大きさでも、夜3回トイレに起きても患者さんが特に困っていなければ治療の必要はありません。

 

 

 治療の希望があれば、まず薬の服用から始めます。ある患者さんは症状の悪化する秋~冬の約半年間のみ薬剤の服用をされている方もいらっしゃいます。

 薬物療法

 最近はα1受容体遮断薬とホスホジエステラーゼ5阻害剤のいずれかが第一選択薬となっているようです。

 前者は肥大によって狭くなった尿道を広げることにより症状を改善します。後者は血管拡張作用により前立腺、尿道及び膀胱への血流を改善することにより症状を改善します。

 また、前立腺を小さくする作用の薬剤としては5α還元酵素阻害薬があります。男性ホルモンが前立腺細胞の増殖するところを抑える作用があり、結果として前立腺の大きさが小さくなります。ただ効果があらわれるのに時間がかかる(半年~1年くらい内服が必要)こと、前立腺の腫瘍マーカー(PSA)の値を低下させてしまうため、PSA値が高値の方には慎重に投与を行う必要があります。1年で約3割くらいの縮小効果があると言われているようです。

 その他、生薬や漢方薬等、また過活動膀胱の方に処方する薬剤等も症状によっては検討されます。

手術

 私が医師となった頃は前述の前立腺に特化したα1受容体遮断薬がまだ登場する前で生薬の薬物療法が中心で、その頃は内視鏡の手術が多く行われていましたが、α1受容体遮断薬登場後は手術が激減しました。手術の適応は以前よりかなり狭くなってきました。薬物療法で効果が不十分な場合や重篤な合併症(腎機能障害、尿閉など)といった場合などは手術療法が選択されます。

 お腹を切らずに内視鏡で行う切除術が主流です。副作用として術後、精液が尿道から外に出なくなり(膀胱の方に出ます)、まれに勃起障害になることがあります。多くの場合、排尿障害の症状は改善されます。ただ、夜間頻尿はいろいろな原因がありますので、術後も改善しない場合がありますので注意が必要です。

 その他としては内視鏡で前立腺に圧迫された尿道にステントという筒状のものを留置する方法もありますが、あまり行われていないと思います。