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急増する梅毒

 梅毒については以前このブログでも取り上げましたが、昨年発症報告件数が1万件を超え、半世紀ぶりの高い感染水準となりましたので、注意喚起という意味でも、もう一度取り上げたいと思います。

 

 梅毒は、梅毒トレポネーマという病原体による感染症で主に性的接触により、性器や口などの粘膜や皮膚から感染します。オーラルセックスやアナルセックスなどでも感染し、性器や口の中にあずきから指先くらいのしこりができたり、かゆみや痛みのない湿疹が手のひらや体中に広がったりします。特に性器や口の中にできたしこりは自然消失しますが、感染力が残っているので注意が必要です。

 

 未治療のまま病期が進むと脳を含む全身に多彩な症状が出現します。また、妊婦が感染すると胎児に深刻な影響を及ぼし、流産や死産、先天梅毒などを引き起こす恐れがあります。

 

 梅毒は、抗生剤(ペニシリン)の普及により激減しました。日本では2000年代には年間500~800件台で推移していました。2011年頃から増加傾向に転じ2019~2020年は減少傾向となりましたが、2021年には再び増加に転じ、昨年は1万件を超えてしまいました。

 

 

 近年の傾向としては異性間の性的接触による感染が増えており、男性では20~50歳代、女性では20歳代に多いようです。また、昨年のデータでは男性患者の4割に性風俗産業の利用歴が、女性患者の4割に従事歴のあることも判明しています。

 

 

 感染者増加の理由は、いくつかあるようで、遺伝子の変異による薬剤耐性が生じ治療薬が効きにくくなった点、不特定多数または複数の相手と性的接触を持つ人が増えた点、オーラルセックスが一般化した点、コンドームを使用しない点などが挙げられています。

 藤沢市では保健所にて匿名・無料で検査当日に検査結果が分かる梅毒・HIVの検査が受けられますので、気になる方はぜひ受診してください。

 

 

参考文献

  目瀬 浩  急増する梅毒への対応  医歯協MATE No.337

 

  早川 智  偉人たちの診療録    医歯協MATE No.337