エクソソーム(細胞外小胞)は、かつては老廃物を運び出す「ゴミ袋」と思われていました。
エクソソームは、マイクロRNA(22塩基程度の小さなRNA)を内包し、細胞から分泌されます。
このマイクロRNAは、血液中でも安定していて少量でも高感度に検出可能だそうです。エクソソームは、がんが初期の段階から分泌されるので、早期のがんでも発見が可能という特徴があります。
現在13種類のがん(神経膠腫、乳がん、肝臓がん、胆道がん、膵臓がん、卵巣がん、前立腺がん、食道がん、肺がん、胃がん、大腸がん、膀胱がん、肉腫)を鑑別する方法が確立されています。
最近の研究でエクソソームの膜に結合している膜貫通型のたんぱく質に何らかのシグナルを伝えるという重要な役割のあることが分かってきました。例えばあるエクソソームの膜たんぱく質が、大腸がんの転移や薬剤耐性の拡大に関与していることが明らかになっています。
国民の約半数の方が、がんになる時代です。今後は、がんと共存しながらその人らしく生きることが大切になってきます。そのためには転移をコントロールすることが重要になります。
エクソソームの研究が進んでくると転移などのメカニズムが明らかになってくることが期待されます。さらに、従来の治療法とは異なるエクソソームを標的とした新たな治療法の確立への道をひらいていくことも期待されます。
エクソソームの研究に今後も注目して行きたいと思います。
参考文献
落谷孝広 期待膨らむエクソソーム研究 医歯協MATE 2024.1 No.340